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『誰か席に着いて』田辺誠一さん、木村佳乃さん、片桐仁さん、倉科カナさんインタビュー

芝居で魅せて、芝居で笑わせたい

                   〜作・演出/倉持裕(写真右端)

 いよいよ公演が間近に迫った『誰か席に着いて』。人気作家・倉持裕が選んだ今回の舞台は、とある芸術文化財団の助成金対象者選定の場です。財団創設者の娘2人とその夫たちは、芸術の未来を語りながらも頭の中は目の前の現実で精一杯。自らの問題解決のため4人がたびたび中座して一向に結論が出ないことから、『誰か席に着いて』というタイトルがつきました。理想と現実、嫉妬とプライド、お金や子どもの有無…2組の夫婦が抱える悩みや秘密は、きっと誰もが一つは共感できることでしょう。崇高な芸術と我欲の間をせわしなく往復する、大人たちのコメディドラマ。まだ稽古が始まる前でしたが、4人の豪華キャストにお話をお聞きしました。

クスっとする笑いをみんなで共有したい 〜 田辺誠一

演出と役者が同世代の強みってあると思う〜 木村佳乃

●2人の姉妹、そして2組の夫婦、それぞれが秘密を抱えた役です。

田辺:僕は甲斐性無しの映画プロデューサー・哲朗を演じます。経済的にも木村さん演じる妻頼みなのに、自尊心が邪魔してサポートに回れず、女性問題まで抱えていて…という役どころ。

木村:田辺さんとは倦怠期を迎えた夫婦役なんですよね(笑)。私が演じる織江は売れっ子脚本家なのですが、スランプに陥っていて、つい出来心から秘密を抱えてしまいます。

片桐:僕はアーティストとして売れたいと思っている奏平役。お金こそ使い込んでるけどクリエイティブな悩みだから、他の方ほど深刻な秘密ではないかな(笑)。カナちゃんと夫婦役だなんてビックリ!

倉科:10年前、初めてお芝居した時の相手役が片桐さんなんですよね。私は元舞踏家で、出産を機に夢をあきらめた珠子を演じます。現状に満足できず、田辺さん演じる義兄の甘い誘いにのってしまい、木村さん演じる姉に嫉妬している役です。

木村:でも、こちらの夫婦には子どもがいないんですよ。だからお互い嫉妬しあってる。

片桐:身につまされるというか、身の回りによくある話ですよね。

倉科:仕事で未来を語りながらも、頭の中は目の前の現実で精一杯って、きっと誰もが当てはまるところがあると思います。

田辺:芸術がテーマの話ではありますが、同世代(30~40代)の抱えてる悩みとかに共感できるような部分を作っていきたいですね。

●倉持作品の魅力を教えてください。

片桐:僕、倉持作品6度目なんですが、何が面白いのかは人それぞれなんだってことを、身を持って教えてくださった方です。演劇の可能性を広げてくれます。

倉科:視点が面白いですし、言葉のチョイスも素晴しいです。毒のある、でも主張しすぎない笑いというか、穏やかに少しずつ広がってくる感じが大好き。

田辺:クスっと空気があたたかくなるような、品のある笑いを共有できるんですよね。笑いというコーティングの奥に、時代を切り取る何かがあるというか。

木村:洗練された“媚びない笑い”って言うんでしょうか。「笑ってください」ではなく、観ていて「あ、ここ面白い。ここも、ここも!」ってどんどん興奮してきます。

一生懸命やってる姿が面白く見えるといい〜 片桐仁

笑えるけど、何か心に残るものを〜 倉科カナ

●倉持さんは「皆さんの芝居に期待している」と話されていましたが、本作への意気込みをお願いします。

田辺:実は、少人数でガッツリお芝居をするというのは初めてなのでワクワクしています。舞台で見せる人間模様がコメディとなって、人間の深い部分まで掘り下げて表現できるよう、みんなで作っていけたらなと思います。

木村:久々の舞台で緊張していますが、倉持さんは同世代の演出家さんなので楽しみです。お客様に日常を忘れて楽しんで、足取り軽く帰っていただけたらなと思います。私も子どもがいるのでわかるのですが、子育て中って時間を捻出するのが意外と大変なんですよね。貴重な時間を割いてお越しいただくので、全力で楽しませたいと思います。

片桐:「こんな風に演じよう」と思ってうまくいったことがないんですよ。でも、コメディはお客様の笑い声という反応で答え合わせできるので、やりがいがあります。あとは、お客様にアピールしすぎないように(笑)。普通の会話の中にちょっとした違和感が続く、倉持さん独特の世界観にうまく染まりたいです。

倉科:一生懸命な生き様とか会話の面白さだったり、繊細なところも表現できたらなと思っています。一つの演出を受けると新しい扉が開けてくるので、倉持さんの演出でどのように進化できるのか楽しみです。

●片桐さんは夏に続いて2度目の久留米。楽しみにしていることは?

片桐:久留米の人は、ラーメンも焼き鳥も何でも久留米発祥って言いますよね(笑)。でも、食いもん美味いです。

田辺:ラーメンは絶対に行きたい。トンコツ大好きです。

倉科:実家が熊本で祖父は福岡なんですけど、福岡で食事する機会がなくて。

片桐:アーケードの中なんだけど、繁華街が近いんですよ。餃子も美味い。

木村:餃子、行こうよ行こうよ!みんなで食べて、みんなで臭ければ問題ないよね(笑)。

■『誰か席に着いて』公演情報の詳細はコチラ

--- profile ---

【たなべ・せいいち】1969年東京都出身。87年にモデルとして活動を開始後、俳優、映画監督としても活躍。”画伯”と称される独特のイラストも人気。97年に蜷川幸雄演出『草迷宮』で初舞台を踏んだ後、蜷川作品をはじめ、いのうえひでのり、宮藤官九郎、松尾スズキらが演出した話題作に出演している。

【きむら・よしの】1974年東京都出身。96年にドラマ『元気をあげる〜救命救急医物語』(NHK)でデビュー。翌年の初出演映画『失楽園』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞後、テレビ、映画、舞台など幅広く活躍中。舞台は、三谷幸喜演出『抜目のない未亡人』(14年)以来3年ぶりとなる。

【かたぎり・じん】1973年埼玉県出身。96年に小林賢太郎とコントグループ「ラーメンズ」を結成。05年からはエレキコミックとのお笑いユニット「エレ片」としても活躍中。彫刻家としての顔を持つ。舞台では、『鎌塚氏、振り下ろす』(14年)などの「鎌塚氏シリーズ」をはじめ、倉持作品にも数多く出演。

【くらしな・かな】1987年熊本県出身。06年に女優デビュー後、09年にはNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』のヒロインに選ばれた。舞台は、行定勲演出『タンゴ・冬の終わりに』(15年)、マキノノゾミ演出の現代能楽集Ⅷ『道玄坂奇譚』(15年)、宮本亜門演出の『ライ王のテラス』(16年)などに出演。

 

2017年11月13日